
(岩手県90歳健康長寿調査事業を中心にして)
岩手県歯科医師会では平成9年度、「8020データバンク構築事業」として、福岡、新潟、愛知の各県歯とともに、大正6年生まれの方を対象に80歳調査を実施し、5年後には85歳調査、さらに5年後の平成19年度は、老人保健健康増進事業の国庫補助を受け、その事業の一環として岩手県90歳健康長寿調査を行いました。
この調査研究事業は、国内はもちろん世界でも例のない貴重な研究で、口腔内の状態や血液検査、運動能力、栄養調査等から、「高齢者の口腔保健と全身の健康との関わりが明確になる」と多方面から成果が期待されています。 又、10年間の長きにわたる縦断調査であること、しかも対象者が高齢者であることから、これは長寿国日本でしか成し得ることのできない研究で、大変意義あることと考えています。そして、今後の医療・保健・福祉の推進において、科学的な根拠の提示に繋がることを期待しつつ、歯科界のみならず広く健康に関連する方々へ活用されることを切に願うものです。


2006年現在、我が国の平均寿命は男で79.00歳、女で85.81歳と世界でも有数の長寿国であり、第二次世界大戦後、「人生50年」といわれていた頃と比べると約30年延びたことになる。「健康で長生きしたい」ことは万人の望むことではあるが、その実現に向けて本調査はきわめて貴重なものになると思われる。平成9年に実施された「8020データバンク構築事業」は、8020運動が推進される中で「80歳の実態」を把握する目的で岩手県を皮切りに、福岡県、新潟県、愛知県で行われ、平成14年には8020推進財団の委託を受けて5年後の追跡調査を実施し、多くのエビデンスを明らかにしてきた。80歳の時点で対象となった盛岡保健所管内9市町村の該当者は944名で、その86.2%にあたる814名が受診したが、85歳では349名(80歳調査で参加しなかった松尾村、滝沢村の66名を含む)が会場健診を受け、90歳の今回、会場健診を受診したのは103名であった。残念ながらこの10年間で他界された方も多いが、諸般の事情で会場健診に来られなかった方々も結構多い。 調査内容は、口腔の状態(口腔診査、補綴物の状況、RSST)、全身の状態(問診、血圧、身長・体重、BMI、血液検査、運動機能)、生活の状況(食事調査、アンケート)である。高齢ということもあり、80歳の調査より内容をかなり絞って実施した。 今回は、90歳の断面での集計分析について報告するが、当初受診した814名の追跡調査でもあることからロ腔の状態と全身の健康との関係について時間軸による詳細な分析が可能である。その成果については分析ができ次第、逐次公表していく予定であり、本研究で得られた成果が広く活用されることを期待してやまない。

口腔内状況は80歳時点で無歯顎者:42名、有歯顎者:38名、一人平均現在歯数:4.75本であった。90歳時点では、無歯顎者:50名、有歯顎者:30名、一人平均現在歯数:3.38本であり、80歳までが歯の喪失などの変化のほぼ最終段階にあったことが伺われた<図1、図2>。


また、80歳時において現在歯を10歯以上保有していた者は、知的能動性が有意に高く、現在歯数の多寡と知的能動性の維持が関連する可能性が示された<.図3、図4>。


一方、90歳時点では、咀0爵力が十分である者は、知的能動性、手段的自立の得点が有意に高く、失った歯を義歯で補うことによって咀唱可能な食品数が増え、義歯に対する満足度が高いほど良好な食生活を営んでいた<図5、表1>。


これらの結果から、健康長寿と噛むことの関係が明らかになり、口腔保健のさらなる推進が重要と考えられた。
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